逆らわない者は味方

みなさんこんにちは。主の平安！

コロナ禍の中、2019年末から教会には集まれず、ずっとZOOMで青年たち、司祭たち、教会の信徒たちと「会う」生活が続いていますが、ZOOMでは「会った」感覚になれず、「あれ、あの話はだれといつしたんだっけ？」なんてなる日々です。

最近は感染状況も改善しています。このまま収束してくれるといいなと願っております。

さて、わたしは今までじっくり時間をかけて、聖書におさめられたなかでは最初に書かれたゆえに、素朴だとされるマルコ福音書を通読してきました。福音書には有名な箇所や意味の分かりやすい箇所もあれば、難解だったり、読み飛ばしてしまいたい箇所もあります。しかしそこを、教友たちの力も借りながら、ああだこうだ言いながら読んでおります。

きょうは、マルコ福音書の9章38節から41節の「逆らわない者は味方」という箇所を読みました。

本文を、新共同訳から引用します：

ヨハネがイエスに言った。「先生、お名前を使って悪霊を追い出している者を見ましたが、わたしたちに従わないので、やめさせようとしました。」

イエスは言われた。「やめさせてはならない。わたしの名を使って奇跡を行い、そのすぐ後で、わたしの悪口は言えまい。わたしたちに逆らわない者は、わたしたちの味方なのである。はっきり言っておく。キリストの弟子だという理由で、あなたがたに一杯の水を飲ませてくれる者は、かならずその報いを受ける。

ヨハネは、イエスの名前を勝手に使って奇跡をおこなう人に対して、とんでもないことだ、大ごとだと思ったのでしょう。そしてイエスに告げ口しにきます。あたらしい訳では、「やめさせました」と報告し、わたしはしっかり手柄をたてましたよ！と言っているようでもあります。

しかしイエスの返答は、その者を「わたしたち」のグループに属さない者として排除するものではなく、ちがっていることの緊張感に注目するものでもなく、小さなお水一杯のことについて話します。ここにヨハネの熱量とイエスのまなざしのコントラストを感じます。

一杯の水を、イエスの恵みを独占せずわかちあうことは、どんなに豊かでしょうか。

イエスは、ただ寛容に、あるいはあきらめ気味に、わたしの名前を使ってもいいさ。と言ったのではなく、イエスの名を使って奇跡をおこなったすぐ後で、わたしの悪口は言えまい。と言っているところが、実に人の心の動きをよく知っていると感じ、感服してしまいます。

そういえば、文脈とは関係ありませんが、聖書独特の漢字の読みとして悪霊（あくりょう→あくれい）、悪口（わるくち→あっこう）がありますが、ここはわるくちとルビがふってあります。朗読されるときはその方がわかりやすいですよね。

わたしは、逆らわない者は味方であるというイエスの返答をみて、自分の教会で過ごしている時間について考えます。

角地に建っていて広い駐車場のある教会は、敷地内をななめに突っ切っていく近所の人の通り道にもなっています。それを通らないでくださいとつっぱねるのではなく、教会の信徒さんたちは、看板にご自由にお取りくださいと教会紹介パンフレットを入れたり、お庭仕事をしながら「お花キレイよね」とお話したりしているのです。

礼拝に集まって来て、教会員として礼拝日誌に人数をカウントされる人だけではなくて、教会は地域に置かれたものとして、もっと広がりをもったコミュニティなのだろう、とわたしは常々考えています。

教会の庭を突っ切っていきながら、お花を見たりパンフレットを持って行ったり礼拝堂の窓から中を見ている人たちは、礼拝に来たり洗礼を受けなかったとしても、味方なのではないかと。

あの人はあの考えだから、仲良くできるわけがない。というこころの働きもありますが、引き離すはたらきではなく、関係を結ぶはたらきが、神のはたらきであるし、そこに愛があるのではないでしょうか。小さなことでもいい。一緒に、「これおいしいね」「この花キレイだね」と言えるための、こころのスペースをあけておきたいと思うのです。

マルコ福音書のなかでイエスの自己理解としてキリストやメシアという言葉が使われるのはめずらしいような気がしますが（ヨハネ福音書には頻出）、キリストの弟子だという理由で、一杯の水を飲ませてくれるというシチュエーションが出てきます。これは宣教旅行に出ているわけではないわたしたちには想像しにくい状況ですが、たとえば教会で奉仕をしてくれている信徒さんに、いつもありがとうとねぎらいの言葉をかける、それも一杯の水なのでしょう。

教会は、見えにくい小さなはたらきに光を当てる場所であってほしい。

神さまのまなざしって、そういうことなんでしょうね。

大きな教会、有力な人物が重要なのではなく、

「そこに愛はあるのか」

「そこで本当の福音が語られているのか」

が大切なのだろう、と。

にんげんの基準を、キリストの弟子は超えていくべきだし、超えられるんじゃないか。と感じます。

わたしは洗礼を受ける前に三年間、学校で毎朝礼拝があってお祈りをしていましたが、

組み合わせた手がギューッと握りしめられ真っ白になりながら、神さまにああせいこうせいと願いばかりぶつけて、神さまのほうが何をわたしにお望みなのか、神さまは何を言わんとしておられるかについては耳を貸しませんでした。

また、自分で抱え込んだことを神さまにあずけて、委ねるのがお祈りですといわれても、それはそのことを投げ捨ててしまうようでずっといやだった時期があります。

その時は、もっとこころの広い神さまのみこころを知らなかったのでしょう。自分で作りだした小さな神さまを握りしめ、独占していました。

しかし、「そこに愛はあるのか」が大切な視点になります。

愛はほんとうの神と人との関係を結び、人と人の関係も結ぶはたらきです。そして、与えられたお恵みを一緒にわかちあう関係ができていきます。分け合ったからといって一人分が少なくなることはありません。ろうそくの炎が移されてみんなの手元が輝くように、拡がっていくものなのではないでしょうか。

イエスの恵み、一杯の水をわかちあうこの勧めは、まさにそのようなはたらきの勧めなのだろうと、自分なりにいろいろ冒険しながら、読んでみました。

祈ります。

わたしたちと生きた出会いをしてくださる神さま、

きょうも生かしてくださっていることに感謝します。

わたしたちはつい、与えられたものを握りしめ、独占し、ひとりよがりになってしまいます。

しかし神さま、あなたはわたしたちのこころを解きほぐし、あなたへと、となり人へと、開かれた存在にしてくださいます。

どうか、あなたが与えてくださったよいものが、ともに分かち合われ、生き生きと流れていくようにしてください。

また、今、しんどい人、疲れていてもがんばってしまう人にいやしのみ手をさしのべてください。

わたしたちのために十字架を背負ってくださったイエスさまのみ名によってこのちいさなお祈りをみ前におささげいたします。

アーメン。