散らかったこころのなかにこそ

第一日課：イザヤ書9：1～6

闇の中を歩んでいた民は大いなる光を見た。

死の陰の地に住んでいた者たちの上に光が輝いた。

あなたはその国民を増やし

その喜びを大きくされた。

彼らはあなたの前に喜んだ。

収穫を喜ぶように

戦利品を分けて喜び躍るように。

彼らの負う軛（くびき）、その肩の杖、虐げる者の鞭を

あなたがミデヤンの日のように

打ち砕いてくださった。

地を踏み鳴らした兵士の靴と血にまみれた服は

すべて焼かれ、火の餌食となった。

一人のみどりごが私たちのために生まれた。

一人の男の子が私たちに与えられた。

主権がその肩にあり、その名は

「驚くべき指導者、力ある神

永遠の父、平和の君」と呼ばれる。

その主権は増し、平和には終わりがない。

ダビデの王座とその王国は

公正と正義によって立てられ、支えられる

今より、とこしえに。

万軍の主の熱情がこれを成し遂げる。

第二日課:ルカによる福音書2:8～21

さて、その地方で羊飼いたちが野宿をしながら、夜通し羊の群れの番をしていた。すると、主の天使が現れ、主の栄光が周りを照らしたので、彼らは非常に恐れた。天使は言った。「恐れるな。私は、すべての民に与えられる大きな喜びを告げる。今日ダビデの町に、あなたがたのために救い主がお生まれになった。この方こそ主メシアである。あなたがたは、産着にくるまって飼い葉桶に寝ている乳飲み子を見つける。これがあなたがたへのしるしである。」すると、突然、天の大軍が現れ、この天使と共に神を賛美して言った。

「いと高きところには栄光、神にあれ

地には平和、御心に適う人にあれ。」

天使たちが離れて天に去ったとき、羊飼いたちは、「さあ、ベツレヘムへ行って、主が知らせてくださったその出来事を見ようではないか」と話し合った。そして急いで行って、マリアとヨセフ、また飼い葉桶に寝ている乳飲み子を探し当てた。その光景を見て、羊飼いたちは、この幼子について天使から告げられたことを人々に知らせた。聞いた者は皆、羊飼いたちの話を不思議に思った。しかし、マリアはこれらのことをすべて心に留めて、思い巡らしていた。羊飼いたちは、見聞きしたことがすべて天使の告げたとおりだったので、神を崇め、賛美しながら帰って行った。八日がたって割礼の日を迎えたとき、幼子はイエスと名付けられた。胎内に宿る前に天使から示された名である。

クリスマスおめでとうございます。

今日読んでいただいた、イザヤ書とルカ福音書は、クリスマス礼拝っていえば！って感じの、箇所ですね。

もうみなさん教会に通われていたら、いろんな先生が聖書学的にいろんな話をされていると思うので、今回わたしは、説明的なことではなくて、霊的、心、イメージで読んでみました。

すると、共通するのが、闇と光なんですね。夜とか、闇、暗～いところに、希望の光がかがやく、というイメージです。

イエスさまは、救いの歴史、聖書全体を貫くのは救済史という人間と神さまのおつきあいですけれども、そのなかで決定的な出来事、愛のあらわれとして、暗闇の中の光として、こられました。

わたしはクリスマスにそんな話を聴いてもわからなかったたちなのですけれども、すこ～しそんなことを予感したような出来事があったので、わたくしごとですが、分かち合わせてください。

...高校生の時ですかね。特にこれという理由はないのですが、こころがむなしさに支配されたことがありました。

なにをしても満たされず、こころここにあらずといった感じでとても、つらかったのです。

しかも、それがはっきり、理由が、わかりません。

原因の分からない苦しみに、なぐさめばかりを求め、わたしは「苦しい人です、悲しい人です」というアイデンティティが固まりつつありました。学校がおわっても家に帰りたくありません。

よく話し、よく笑ったのですが、明るくふるまっていたのかもしれません。

わたしはつねに裏の顔があって、本当の自分はそっちなんじゃないだろうか、とさえ、感じていました。

さて、わたしが中高と過ごした学校には、礼拝堂がありました。

昼休みはとくに礼拝がないので、誰もいないんですね。わたしは静かなのをいいことによくそこに行き、ぼーっとしてました。でもぼーっとしていると言っても、教室の机でぼーっとしているのとは違って、神さまを感じていたのだと思います。

ただ、学校なので、神さまに用事のないひともこのチャペルに入ってくるんですね。

で、ひとり、あ、なんか、座ってるよ、って見つかっちゃうこともありました。

そこで、誰も入ってこない二階席に行くようになりました。わたしはそこにいるのが好きだったんですけれど、同時にかすかな、違和感も持っていました。それはしばらく謎だったんですけれど、あるときその理由がわかります。

二階席は、この、600人入る礼拝堂なんですけれどね、その一番後ろにあるので、祭壇からとっても、遠いです。また、祭壇の十字架を見下ろす形になるんですね。

クリスチャンになる前から学校で、十字架に礼をするようにと教えられ、十字架はつねにこう、仰ぎ見る、ものでした。金色で浮き彫りのしてあるきれいな十字架なんです。偶像礼拝って怒られるかもしれませんけれども、祈るとき、神よ、って唱えると目に浮かぶのがこの十字架でした。

でも昼休み礼拝堂に行くとわたしはそれを見おろしているんですね。だからその場所がしっくりきませんでした。 

普通教会や礼拝堂では、十字架は高い位置に、かかげられます。

だから祈る人々は自然とそれを見上げるかたちになりますね。

ヘンデルのメサイアっていう曲があります。ハーレルヤ、ハーレルヤって有名な曲ですけれども、そういう宗教曲にはhigh ,above ,uponなど、上、とか、高い、っていう言葉が神さまに対して使われています。また、天、という言葉も神様をさししめすものとして日本語では使われますが、いうまでもなく、上という感じのイメージを持ちますね。

ところが、数ある教会や礼拝堂の中には、祭壇がすりばち状になっていて、祭壇や十字架は一番下にあるっていうところもあるそうです。これを聞いた時驚きます。

そして、十字架ってほんとはなんなんだろう、と思いだしました。

学校ではクリスマスに、メサイアを歌いました。爆発的なエネルギー、神さまの権威を象徴するような、華やかな曲です。

しかしそのときの礼拝で読まれたのが、今日の聖書記事です。

イエス様の誕生の記事、そして暗かった人間の歴史を思い描いたり、いぶせきうまやで、なんて聖歌を歌ってみると、あ、イエス様ってキラキラの映えじゃなかったんだ、今はやりの言葉でいうとそんなことを感じます。

高校一年生の時、宿泊学習で、牧場のある聖公会系のお宿に行って、牛舎のそうじをやったんですね。なんだかもう、、、きれいじゃないしにおいもすごいです。

みんないやがりながらやりました。しかし、そういうところにイエスは生まれたと言います。身分も高くなく、最後にはみんなから忌み嫌われる十字架刑という死をとげています。

そっか！ 

金色の十字架って最初から存在したわけじゃないんだ。死と復活、そのあと彼の教えを聞いた弟子たち、その教えを聞いた人たちによって、今の位置に「あげられた」しるしなのだと、思い至ります。

神が人間として、人性をとって、来られたというクリスマスは、神さまがもっとも低いところに来てくださったということなのです。

そう思い至ったときに、自分の心のなかに宿っていたむなしさは、単なるいやな気分ではなくて、神さまが来てくださる低きところのひとつなのだと思うことができました。

神さまは上から、ですね、杖をふりかざして魔法使いのおじいさんみたいに、暗さや痛みをとるんじゃなくて、その中におんみずから降りてこられる方です。

わたしが自分の中に見つけ、自分でも「いやだ」と思うようなところに、汚くても、散らかってても、つまり裏の顔、でも本当の自分だっていうところに、イエス様をお迎えします。

相変わらずなぜか帰りたくなかったわたしは、近くの教会などに行って、よく座ってました。わたしはそのむなしさの中で何を求めていたか。イエス様にこそ、来てほしいと思っていたからだし、教会にいたときの心は、平安でした。

付け加えなんですけれど、今日のイザヤ書に「驚くべき指導者」という言葉が出てきます。これすごく偉い感じの言葉なんですけれど、メサイアではワンダフル・カウンセラーと歌われていて、だいぶ感じがちがいます。こころの闇の中におりてきて、耳を傾け、こころを遣う、イエス様を感じます。

さて、神さまからの恵み、慰めはいったいどこにあるんでしょうか。

わたしは信じているのです。空気が少なくなって気圧が低くなっている場所に、風がぴゅぅっ!と吹き込んでくるかのように自然と、神さまはそれを必要としている人のことをこころにかけてくださるのです。

しかしそれが見えないこともあります。

救いの計画はいまも完成に向かっている途中です。

たとえば、運命の分かれ道なんてことばがありますけれども、いま、コロナ禍のことがあり、個人的ないろんな苦しみ悲しみがあり、わたしや世界はこっちの悲しい道に進んでいってしまっている、と思っている人もいるかもしれません。

そして、善、希望、喜びはこっちの別の道にあるのに、いまこっちには行けないと感じている人もいるかもしれないんですけれども、苦しみ、悲しみは手前にあって、その先に、希望があるのではないでしょうか。

それを通り越して、恵みの世界に行くのです。

みんなの道は、曲がっていても、実はまっすぐです。

たとえ目にみえて信じられなくても、ご計画は進んでいます。

アナログ時計をイメージすると、分針と秒針がありますね。

分針だけ見ていると、まだすすまないな、って感じなんですけど、時計の中でカチカチカチカチって歯車はまわっているんです。そしてカチリと針が進みます。そんな風に神さまと人間のおつきあいの歴史のなかで、決定的な出来事として、イエスさまは来られ、生きておられます。

個人的なレベルでいうならば、ひとりひとりのあるときの祈りが、そのカチリという決定的な体験になるかもしれませんし、わたしひとりの祈りが、実は神さまのお手伝いになるかもしれません。

きょう、福音書で、マリアさまはこころに、納めます。イエスさまのこと、イエスさまの人生のこと。そんなこころの広さ、持ち合わせていなくても、汚れていて、散らかっていてもいいのです。それでも、イエスさまは来てくださいます。

それでこそ、

来てくださるのです。

どうかわたしたちのこころに寝かせる場、イエス様に寝ていただく場所を用意し、そして育っていただくことを願って、祈りを続けて参りましょう。